旅館やホテルに泊まる際、内装やインテリア、設備など、人それぞれにこだわりポイントがあるかと思いますが、今ひそかに人気を集めているのが、椅子とテーブルが置かれた窓際のスペースです。あの場所、なんと呼んでいますか? 実は、れっきとした名称があるのです。その名称や場所としての役割などについてご紹介します。
旅館やホテルの窓際にあるスペースの名称
旅館やホテルの和室には、窓際に「椅子とテーブルを置いたスペース」があります。外の景色を見たりお茶を飲んだり、とても便利なスペースですが、この場所の正式名称を知っている方は少ないようです。あのスペースの名称は「広縁(ひろえん)」といいます。ぜひ、この機会に覚えておいてくださいね。
旅館やホテルの窓際にあるスペース「広縁(ひろえん)」とは
ところで広縁とは何なのでしょうか。どうして部屋に広縁が設けられているのでしょうか。その疑問を解決していきましょう。
・「広縁」の定義は?
日本の家屋には、和室の南の方角に面して板敷の間がありました。建築用語で「縁」もしくは「縁側」といい、その幅の広いものが「広縁」です。一般的な基準としては、幅(奥行き)3尺(約91センチメートル)のものが縁側、4尺(約120センチメートル)以上ものが広縁と呼ばれています。
・広縁はなんのためにある?
広縁や縁側は日本家屋独特のもので、もともとは建物への入り口、部屋と部屋を行き来する廊下、つまり通路としての役割を担っていました。身分制度があった時代は、室内には立ち入ることの許されない低い身分の者が控える場として活用されていたともいいます。やがて身分制度のない時代になると出入り口代わりとして、人々が集う場として活用されるようになりました。
もうひとつ、広縁や縁側を設けた背景には「部屋を広く見せられる」という事情もあったといいます。さらに、南側からの日射しが直接部屋に入ることを防いで畳や襖を日焼けから守る、断熱効果を得るという役割も持ち合わせていました。
広縁の用途
さて、旅館やホテルに設置されている広縁は、どのように使えばよいのでしょうか。基本的には自由に使ってかまわないのですが、次のような使い方ができます。
・サンルームのように使う
まずおすすめしたいのが、サンルームのように使うことです。サンルームとは、太陽光が取り入れられるガラス張りの部屋のこと。南側に面していて、雨風をしのぐための窓も取り付けられている広縁は、まさしくサンルームといえるのではないでしょうか。日光浴をするほか、お茶を飲んだり、景色を眺めてくつろいだり、心と身体のリフレッシュにぴったりのスペースです。
・濡れたものを乾かす
タオルなど、濡れたものを乾かす場所として使うこともできます。日の入る窓際のスペースなので、昼間なら乾きも速いはずですし、就寝中も湿気が気になりません。ちょっとした洗濯物もハンガーにかけて干すことができます。
ホテルや旅館に宿泊するときには、ぜひ「広縁」に目を向けてみてください。名称や由来を知れば、客室の造りを見る目も変わりそうです。客室での時間を充実させると、旅もよりいっそう楽しくなりますね。